「床ずれ(褥瘡)ができかけている」「入院中にできてしまった褥瘡が、まだ治りきっていない」——そんな状態で施設を探し始めると、パンフレットの「医療体制充実」という言葉だけでは、この施設が褥瘡ケアにどこまで力を入れているのか判断がつかない、という悩みに突き当たります。実は、施設の褥瘡ケアへの取り組み姿勢を客観的に見分けられる制度上の手がかりがあり、令和6年度の介護報酬改定でその中身が少し変わりました。

先に、要点をまとめます。

  • 特養・老健などで算定される「褥瘡マネジメント加算」は、3か月に1回以上のリスク評価とケア計画の見直しを施設に求める仕組みで、算定している施設は褥瘡ケアを体制として回している可能性が高い
  • 令和6年度改定で、評価項目に「褥瘡の治癒」が加わり、発生予防だけでなく治すところまで施設の取り組みとして評価されるようになった
  • ただし有料老人ホーム・サ高住・グループホームはこの加算の対象外(対象は特養・地域密着型特養・老健・介護医療院・看護小規模多機能型居宅介護)のため、対象外の施設では別の確認方法が必要
  • 見学では「エアマットの有無」だけでなく、体位変換の頻度と記録の有無、褥瘡ケア計画の見直し周期まで具体的に聞くと、体制の実態が見えやすい

ただし、この加算の有無だけで施設の良し悪しを決めてしまうと、見落としてしまう確認ポイントがあります。後半で具体的に説明します。

褥瘡マネジメント加算とは、結局どんな仕組み?

施設に入所している人の褥瘡(床ずれ)の発生を防ぎ、できてしまった場合は治すところまでを、施設がチームで継続的に取り組んでいるかを評価する介護報酬の加算です。算定するには、次のような取り組みが施設に求められます。

  • 入所時などに、入所者ごとに褥瘡発生のリスクを評価する
  • 少なくとも3か月に1回、リスクを再評価し、その結果をLIFE(科学的介護情報システム)に提出する
  • リスクがあると判断された人ごとに、看護師・介護職員・管理栄養士など関連職種が共同で「褥瘡ケア計画」を作成する
  • 計画に沿ってケアを実施し、内容や状態を記録する
  • 少なくとも3か月に1回、ケア計画を見直す

つまり、この加算を算定している施設は、褥瘡ケアを「気づいた人が個別に対応する」のではなく、評価・計画・記録・見直しのサイクルとして組織的に回しているということになります。見学時にこの加算の算定有無を尋ねると、その施設が褥瘡ケアにどの程度の体制で臨んでいるかを推し量る手がかりになります。

令和6年度の改定で、何が変わった?

「褥瘡ができないようにする」ことに加えて、「できてしまった褥瘡を治す」ことも、加算の評価対象に加わりました。

改定前の評価項目は、褥瘡発生のリスクが高い人に褥瘡が発生していないこと、そして施設入所時などに認めた褥瘡が治った後に再発していないことの2点でした。改定後は、この「再発していないこと」に加えて「褥瘡が治癒したこと」自体も評価対象になっています(令和6年度介護報酬改定・社会保障審議会介護給付費分科会資料より)。厚生労働省はこれを「アウトカム評価の充実」と位置づけており、施設側に、褥瘡ケアの結果そのものへの取り組みをより強く促す改定だといえます。

あわせて、医学的評価の頻度についても「3か月に1回」へ統一する見直しが行われ、事務負担の軽減が図られています。家族にとって重要なのは単位数の増減よりも、「治すこと」自体が制度上の評価項目に明記されたという点です。褥瘡がある状態で入所を検討している家族にとっては、施設側が治癒に向けた取り組みを行う動機が制度的に強まったと捉えられます。

この加算は、どの施設でも算定されている?

いいえ。褥瘡マネジメント加算の対象施設は限られており、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームは対象外です。

対象となるのは、特別養護老人ホーム(特養)、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、看護小規模多機能型居宅介護に限られます。民間の有料老人ホームやサ高住、グループホームは、この加算の枠組み自体が存在しないため、「加算を算定していないから褥瘡ケアに力を入れていない」と単純に判断することはできません。

対象外の施設で褥瘡ケアの体制を確認したい場合は、加算の有無ではなく、次のような観点で個別に質問する必要があります。

  • 看護職員が配置されているか、配置されている場合は何時間・何人体制か
  • 提携している訪問看護ステーションや皮膚科・形成外科との連携があるか
  • 体位変換やポジショニング、体圧分散マットレス(エアマット等)の導入方針
  • 褥瘡が発生した場合の対応フロー(施設内で完結するか、医療機関に相談するか)

特養・老健など加算対象施設であっても、この加算を算定していない施設も存在するため、「対象施設だから安心」と決めつけず、算定の有無を直接確認することが実務的な第一歩になります。

褥瘡マネジメント加算の対象施設(特養・老健・介護医療院等)と対象外施設(有料老人ホーム・サ高住・グループホーム)で、確認すべき質問の軸が加算の有無か個別の看護体制かに分かれることを示した比較図

見学のとき、具体的に何を聞けばいい?

「エアマットはありますか」という質問だけでは、体制の実態はほとんど分かりません。体位変換の頻度、記録の有無、計画の見直し周期という3点を具体的に聞くと、パンフレットの言葉の裏側が見えてきます。

確認したいこと聞き方の例何が分かるか
体位変換の頻度と方法「体位変換は何時間おきに行っていますか。体圧分散マットレスを使う場合は間隔が変わりますか」マットレスの性能に応じて運用を調整しているか(画一的な対応でないか)
記録の仕組み「体位変換や皮膚の状態は、どのように記録していますか」個人の感覚任せでなく、記録として残す仕組みがあるか
ケア計画の見直し周期「褥瘡のケア計画は、どのくらいの頻度で見直していますか」3か月に1回程度の見直しが行われているか(加算算定施設の目安と一致するか)
発生時の連携体制「褥瘡ができてしまった場合、施設内の看護師だけで対応しますか。それとも提携医療機関に相談しますか」施設単独で抱え込まず、外部の医療資源と連携できているか

見学時にこれらを一つずつ質問し、担当者の回答が具体的か、それとも曖昧なままかを見比べることが、パンフレットの「医療体制充実」という言葉の実態を確かめる一番の近道です。

そもそも、なぜ高齢者は床ずれができやすい?

皮膚の弾力低下・栄養状態・寝たきり時間の長さが重なると、同じ姿勢を続けるだけで血流が滞り、皮膚や皮下組織が損傷を受けやすくなるためです。加齢に伴う皮膚の菲薄化に加え、食事量の低下による低栄養、自力での体位変換が難しい状態が重なると、骨が突出している部位(仙骨部・かかと・肩甲骨まわりなど)に圧迫が集中し、数時間単位で皮膚組織にダメージが生じ始めます。

在宅介護の段階で既に褥瘡ができている場合、施設側に伝えておきたい情報は次の3点です。

  • 現在の褥瘡の部位とステージ(発赤程度か、皮膚が欠損しているか)
  • 自宅でどのような処置・ケアを行ってきたか(ドレッシング材の種類、通院頻度など)
  • 栄養状態(食事量、体重の変化、経管栄養の有無)

これらを事前に整理して施設に伝えておくと、見学や相談の場での確認がスムーズになり、施設側も受け入れ可否の判断をしやすくなります。栄養状態は褥瘡の予防・治癒双方に直結するため、体位変換やマットレスの話に偏りがちな中で見落とされやすい観点でもあります。管理栄養士が配置されているか、栄養状態の評価を定期的に行っているかもあわせて確認しておくと安心です。

褥瘡の状態によって、入居できる施設は変わる?

すでに褥瘡がある場合、その重症度(ステージ)によって受け入れ可能な施設の幅は変わってきます。軽度の発赤程度であれば多くの施設で受け入れの相談が可能ですが、真皮を越える深さの褥瘡や、感染を伴う状態では、看護体制がより手厚い施設や医療機関との連携が強い施設でなければ対応が難しい場合があります。

現在の褥瘡の状態(ステージ、処置の内容、通院の頻度)は、かかりつけ医や訪問看護師に一度整理してもらい、その情報をもとに施設に相談すると、見学の段階で「対応できるか、できないか」の判断が早まります。医療的なケアが必要な場合の施設選び全般については、医療対応が必要な人の老人ホーム選びでも整理しています。

見学・相談でありがちな失敗は?

「エアマットがあるから大丈夫」と設備の有無だけで安心してしまうことが、最も起こりやすい失敗です。

設備はあっても、体位変換の頻度が形骸化していたり、記録が残されていなかったりすれば、褥瘡の予防・治癒にはつながりにくくなります。逆に、加算を算定していない施設でも、看護職員の配置が手厚く、個別のケアが行き届いているケースもあります。「加算の有無」も「設備の有無」も、あくまで確認の入り口の一つであり、実際の運用(誰が・どのくらいの頻度で・何を記録しているか)まで踏み込んで質問することが欠かせません。

もう一つ見落としやすいのが、体位変換の間隔を「2時間おきが絶対」と思い込んでしまうことです。体圧分散マットレスの性能によっては、間隔を長くしても皮膚への負担を抑えられる場合があり、画一的な回数よりも、その施設がどんな根拠で運用を決めているかを聞く方が実態に近づけます。

この記事で持ち帰れること

  • 褥瘡マネジメント加算は、評価・計画・記録・見直しのサイクルが施設に組み込まれているかを見分ける手がかりになると分かった
  • 令和6年度改定で「褥瘡の治癒」自体が評価対象に加わったことを踏まえ、施設に治療方針まで聞けるようになった
  • 加算の対象外施設(有料老人ホーム・サ高住・グループホーム)では、看護体制や連携医療機関の有無で個別に確認する必要があると分かった

まずは、今検討している施設(またはこれから見学する施設)が、褥瘡マネジメント加算の対象施設かどうかを確認するところから始めてみてください。対象施設であれば加算の算定有無を、対象外の施設であれば看護体制と医療連携を、それぞれの切り口で質問できます。

床ずれ・褥瘡への対応で施設を絞り込みたい方は、介護しせつさーちの検索から「床ずれ・褥瘡 要確認」の条件で候補を絞り込み、見学時にこの記事の質問リストを使って確認してみてください。


参考にした一次情報

  • 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(令和6年1月22日資料)
  • 厚生労働省 介護保険最新情報「褥瘡マネジメント加算」関連通知

夜間、施設に看護師が常駐していない時間帯の医療対応について気になる方は、夜間、施設に看護師はいない?オンコール体制の仕組みと家族が確認すべき4つのこともあわせて確認しておくと、褥瘡ケアを含めた夜間の医療体制全体をイメージしやすくなります。