住宅型有料老人ホームを検討していると、「ケアプランを作る担当者が、施設と同じ系列の会社ばかり選んでいる気がする」と感じたことはないでしょうか。実はこの"囲い込み"と呼ばれる状態を是正するための制度が、2026年6月に法律として成立しました。住宅型有料老人ホームの一部が、都道府県などへの「登録」を求められるようになります。
先に、要点をまとめます。
- 2026年6月25日公布の「社会福祉法等の一部を改正する法律」により、中重度の要介護者等を入居させる住宅型有料老人ホームを対象にした新しい登録制度が創設される(介護付き有料老人ホームは対象外)
- あわせて、入居者のケアプラン作成・相談支援を行う「登録施設介護支援」という新しい枠組みが創設され、利用者負担が新たに発生する見込み
- 狙いは、施設と同じ系列のサービス事業者にケアプランが誘導されやすい"囲い込み"を是正し、ケアマネジメントの独立性を確保すること
- 施行時期は法律の項目によって異なり、この登録制度の部分は公布から最長3年以内(2029年6月頃まで)に政令で定める日からの施行。2027年4月ではない点に注意が必要(老人福祉法とは別の「協力医療機関の義務化」が2027年4月施行のため混同しやすい)
制度の詳細(登録基準・対象範囲・経過措置の中身)は、これから政省令で具体化されていく段階です。現時点で分かっていることと、まだ決まっていないことを分けて整理します。
住宅型有料老人ホームの「登録制度」とは何?
中重度の要介護者を受け入れている住宅型有料老人ホームが、都道府県などに登録することを求められる新しい仕組みです。これまで有料老人ホームは、都道府県への「届出」は必要でしたが、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定)のような手厚い基準にもとづく指定・登録の仕組みはありませんでした。
今回の改正で新設されるのは、要介護度が高い入居者を受け入れている住宅型ホームを対象にした登録制度です。対象になるのは「中重度の要介護者等を入居させる」ホームに限られ、自立度の高い方向けの住宅型ホームすべてが対象になるわけではありません。ただし、どの範囲の要介護度から対象になるかという具体的な線引き(政令事項)は、今後決まる予定です。国会の附帯決議では「要介護3以上の者の安全性確保」という表現が使われており、要介護3以上の受け入れが一つの目安になりそうですが、確定した基準ではない点に注意してください。
介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の位置づけについては老人ホームの種類と選び方、住宅型ホームそのものの特徴は住宅型有料老人ホームとはでも整理しています。
なぜ今、この制度が作られるのか?
"囲い込み"と呼ばれる、施設が自社系列の訪問介護・デイサービスなどにケアプランを誘導する状態を是正するためです。住宅型有料老人ホームは、施設自体は「住まい」の提供にとどまり、介護サービスは入居者が個別に訪問介護やデイサービスなどを契約する仕組みです。この仕組み自体は自然な形ですが、施設の運営会社と同じ系列のサービス事業者ばかりが選ばれ、他の事業者を選びにくい状況になっているケースが課題として指摘されてきました。
国会の附帯決議でも「特定のサービス事業者の利用を入居の条件とする行為の禁止」「ケアマネジメントの独立性確保のための措置が、単なる形式的なものにとどまらないよう、実効性を厳格に担保すること」が政府に求められています。系列会社への不自然な集中が起きていないかを継続的に検証する仕組みも、あわせて求められています。
「登録施設介護支援」で何が変わる?
登録を受けたホームの入居者は、「登録施設介護支援」という新しい枠組みでケアプラン作成・相談支援を受けることになり、その分の利用者負担が新たに発生する見込みです。現状、住宅型有料老人ホームの入居者がケアプランを作る場合は、在宅の利用者と同じ居宅介護支援(ケアマネジメント)の枠組みを使うのが一般的です。今回新設される「登録施設介護支援」は、住宅型ホームの入居者向けに位置づけを整理し直すもので、介護付きホームの入居者向けサービスとの均衡を図る観点から、利用者負担が求められる方向になっています。
一方で、国会の附帯決議では「サービス利用の抑制による重度化リスク」「ケアマネジャーへの過剰な要求の状況」を施行後に継続的に把握し、必要な見直しを行うことも求められています。制度の具体的な負担額や運用ルールは、今後の政省令・介護報酬改定の議論で決まっていく段階のため、現時点で「いくら負担が増えるか」を断定できる情報はありません。今後の報道や自治体からの案内を継続して確認する必要があります。
いつから始まる? 2027年4月との違いに注意
この登録制度そのものは、法律の公布日(2026年6月25日)から最長3年以内に政令で定める日から施行されます。改正法全体の基本的な施行期日は令和9年4月1日(2027年4月1日)ですが、項目によって施行時期が細かく分かれており、住宅型有料老人ホームの登録制度を含む一部の項目は「公布後3年以内に政令で定める日」に施行されると整理されています。つまり、最も遅い場合で2029年6月頃までの間のどこかで施行される計算になり、確定した施行日はまだ決まっていません。
同じ2027年4月という時期でも、介護保険施設(特養・老健など)に義務付けられる「協力医療機関」の体制強化は、これとは別の制度で、こちらは2027年4月1日に完全義務化されることが既に決まっています。詳しくは施設の協力医療機関はこれから変わる|2027年4月の義務化前に家族が確認したいことで整理していますが、「2027年4月=すべての新制度が始まる日」ではなく、制度ごとに施行時期が異なることを押さえておくと、情報を整理しやすくなります。
今、住宅型ホームを検討している家族は何をすればいい?
現時点でできることは、施設見学の際に「ケアプランを作る事業所は自由に選べるか」を具体的に確認しておくことです。制度の施行はまだ先ですが、囲い込みが課題として国会でも取り上げられている以上、施設側に事前に聞いておいて損はありません。
見学・面談で聞いておきたい質問例です。
- 訪問介護やデイサービスなど、併用するサービス事業者は入居者が自由に選べるか。特定の系列事業者以外を選んだ場合に不利益はないか
- ケアプランを作成するケアマネジャーは、施設の運営会社と資本関係があるか、独立した事業所に所属しているか
- 現時点でこのホームが将来の登録制度の対象になりそうか(要介護度の高い入居者を主に受け入れているか)
こうした質問に具体的に答えられる施設は、制度の変わり目でも情報を整理して案内してくれる可能性が高いといえます。逆に、質問自体に戸惑うような対応であれば、契約前に重要事項説明書をあらためて確認しておくとよいでしょう。契約前の確認事項全般は老人ホーム契約前に確認することにまとめています。
この記事で持ち帰れること
- 住宅型有料老人ホームの一部(中重度の要介護者を受け入れているホーム)に、都道府県などへの新しい登録制度が導入されること
- あわせて「登録施設介護支援」が新設され、ケアプラン・相談支援に利用者負担が新たに発生する見込みであること(金額は未確定)
- 狙いはケアプランの"囲い込み"是正であり、施行はまだ先(公布後最長3年以内、2027年4月の協力医療機関義務化とは別制度)だが、今のうちから見学時に「ケアプランを自由に選べるか」を確認しておく価値があること
まずは、今検討している住宅型ホームの候補について、ケアプラン作成の仕組みがどうなっているかを一度確認してみることから始めてみてください。制度の詳細が決まり次第、続報でお伝えします。
施設ごとの費用体系やサービス内容を比較したい場合は、介護しせつさーちの検索から住宅型・介護付きなどの種別で絞り込みながら候補を比較できます。特養など介護保険施設の医療体制の変化とあわせて、施設全体の制度動向を把握しておきたい方は、施設の協力医療機関はこれから変わる|2027年4月の義務化前に家族が確認したいこともあわせてご覧ください。
