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老人ホームの返還金とは?計算方法・戻る時期と3か月以内の短期解約特例を表すイラスト費用

老人ホームの返還金とは?計算方法・戻る時期と3か月以内の短期解約特例

作成日
2026年7月8日
最終更新日
2026年10月13日

結論、返還金は前払金(入居一時金)のうち、退去・死亡の時点でまだ充当されていない分が戻るお金です。入居後3か月以内なら日割りの家賃等を差し引いた残りが返還の対象です。計算例、戻る時期の確かめ方、倒産時の保全措置、契約前のチェック項目を整理します。

01返還金とは何?前払金(入居一時金)との関係は?

返還金は、入居時に払った前払金(入居一時金)のうち、退去や死亡で契約が終わった時点でまだ充当されていない分が戻るお金です。前払金を受け取る有料老人ホームには、返還の契約を結ぶ義務があります。

「返還金(へんかんきん)」とは、有料老人ホームに入居するときにまとめて支払う前払金(ぜんばらいきん/いわゆる入居一時金)のうち、退去や死亡で契約が終わった時点でまだ充当されていない分が、ご本人やご家族(相続人)に戻ってくるお金のことです。

前払金は、家賃などの一部を先にまとめて払っておく性格を持つお金で、入居中に少しずつ消化(償却)されていきます。そのため、想定していた期間より早く退去すると、消化しきっていない残りの分が出ることがあります。これが返還金です。

前払金を受け取る施設には、老人福祉法という法律で、(1)前払金の算定の基礎を書面で示すこと、(2)早期に契約が終わった場合の返還金の算定方法を定めること、(3)倒産などに備えた保全措置を講じること、が義務づけられています(老人福祉法第29条)。具体的な条項や運用の詳細は、施設・自治体への確認をおすすめします。

施設探しの段階では、まず前払金があるタイプか、月払い(前払金なし)タイプかを確認しましょう。前払金があるなら、「いくらが、どんな計算で、どんなときに戻るのか」は施設ごとに異なり、契約書と重要事項説明書に記載されます。ここを読み合わせることが、後のトラブルを防ぐ第一歩です。前払金(入居一時金)そのものの仕組みは、入居一時金とは|家賃の前払いの仕組みと返還・保全をやさしく解説でも詳しく取り上げていますので、あわせて確認しておくと理解が深まります。

02初期償却と償却期間は、返還金にどう関係する?

前払金は「想定居住期間分の家賃等」と「想定居住期間を超えて住み続ける場合に備えた額」でできています。戻るのは前者のうち、まだ住んでいない期間の分です。

返還金がいくらになるかは、前払金の「使われ方」で決まります。国の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」は、終身にわたる契約の前払金を、次の式で算定することを基本としています。

(1か月分の家賃またはサービス費用)×(想定居住期間の月数)+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)

一般に前払金は、次の二段階で消化されていく例が多く見られます。

  • 初期償却:入居した時点で、前払金の一定割合を先に差し引く分。ここは原則として退去しても戻らない扱いが一般的です。
  • 償却期間(償却年月数):残りを「想定居住期間(そうていきょじゅうきかん=施設が見込む入居期間)」で割り、月々少しずつ充当していく分。

返還金は、このうちまだ充当されていない残り(未償却分)にあたります。つまり、想定居住期間より早く退去するほど未償却分は多く、返還金も大きくなる傾向があります。

注意したいのは、初期償却率(差し引く割合)も償却期間も、施設ごとに大きく異なることです。世の中の解説では「初期償却◯%」「償却◯年」といった目安が紹介されることがありますが、これは一律のルールではなく、実際の数値は施設の重要事項説明書で確認が必要です。当ガイドでは具体的な相場の数字は断定しません。

施設を比べるときは、料金表の金額だけでなく、初期償却額・想定居住期間・償却年月数の3点を施設どうしで並べて確認すると、「早めに退去したらいくら残るか」が見えてきます。入居時から退去までにかかる費用全体を見渡したいときは、入居にかかる費用の相場もあわせてご覧ください。

03退去・死亡したとき、いくら戻る?(返還金の基本的な考え方)

入居後3か月以内に終わった場合と、3か月を過ぎて想定居住期間内に終わった場合で、戻る額の考え方が分かれます。想定居住期間を過ぎてからの退去では、返還金は原則ありません。

契約が終わるタイミングによって、返還金の考え方は大きく二つに分かれます。老人福祉法・同施行規則では、入居後の一定期間内(3か月以内)と、それを過ぎた場合とで返還の考え方が整理されており、平成24(2012)年以降に制度が整えられてきました。施行の細かな時期や経過措置は施設・自治体で確認が必要です。

  • 入居後3か月以内に終了した場合:実際に住んだ日数分の家賃などの実費を差し引いた残りが戻る考え方です(次の節でくわしく説明します)。
  • 3か月を過ぎ、想定居住期間内に終了した場合:契約終了時点でまだ充当されていない未償却分が、施設の定めた算定方法に従って戻る考え方です。

いずれの場合も、初期償却された分は原則戻らない扱いが一般的です。

ここで大切なのは、具体的な算定式や金額は施設ごとの契約内容で決まるということです。当ガイドでは個別施設の金額は示しません。施設探しの段階では、「もし1年で退去したら」「もし入居後すぐに亡くなったら」といったいくつかの想定で、返還金がどう計算されるかを見学・相談時に質問し、重要事項説明書の該当箇所を一緒に確認しておきます。返還金以外にかかる退去時の費用全般は、退去時にかかる費用|入居一時金の返還・原状回復・月額の精算で確認することで整理しています。

入居から3か月以内は日割りの家賃などを差し引いた残りが戻る短期解約特例、3か月経過後から想定居住期間までは未償却分が返還金として戻り、想定居住期間の経過後は返還金が原則なくなるという、契約終了時期による返還金の変化を表したタイムライン図

04返還金はいくらになる?計算例で確かめる

前払金の内訳(月額相当・想定居住期間・それを超える分)が分かれば、退去の時期ごとに戻る額の目安を自分で計算できます。

以下は仕組みを説明するための計算例で、特定の施設の料金ではありません。候補の施設の重要事項説明書にある数字に置き換えて確認してください。

計算例:前払金750万円の場合

  • 前払金の内訳:家賃等の月額相当10万円×想定居住期間60か月=600万円、想定居住期間を超えて住み続ける場合に備えた額=150万円
  • 入居から2年(24か月)で退去:まだ住んでいない36か月分(10万円×36か月=360万円)が返還金の目安。150万円の部分は戻らない
  • 入居から5年を過ぎて退去:想定居住期間の600万円はすべて充当済みのため、返還金はない
  • 入居から40日で退去(短期解約特例):家賃等の月額10万円÷30×40日=約13.3万円を差し引いた、約736.7万円が返還の対象。150万円の部分も含めて戻る

短期解約特例の計算は、老人福祉法施行規則第21条で「家賃等の月額を30で割った額に、入居日から契約終了日までの日数をかける」と定められています。3か月を過ぎた後の計算も、実際には日割りや月割りの端数処理、原状回復費の扱いなどが契約ごとに異なります。「1年で退去したら」「すぐに亡くなったら」の金額を施設に試算してもらい、契約書の算定方式と照らし合わせておくと、候補の施設どうしを同じ条件で比べられます。

05入居後3か月以内に退去したら、前払金はどうなる?

入居後3か月以内に契約が終わったときは、住んだ日数分の家賃等を日割りで差し引いた残りが戻ります。いわゆる初期償却の部分も返還の対象です。

入居してみたものの「思っていた暮らしと違った」「体調が変わって別の施設へ」という場合に備えた制度が、短期解約特例です。入居後おおむね90日以内が対象になることから、いわゆる「90日ルール」とも呼ばれますが、法令上の区切りは「入居後3か月以内」として整理されています。

この仕組みでは、入居後3か月以内に契約が解除・終了した場合、実際に住んだ日数分の家賃など(家賃等の月額を30で割った額×入居日数の日割り計算)を差し引いた残りが戻ることが、老人福祉法施行規則で定められています。短期間で合わなかった場合に、家族が大きな金銭的負担を抱え込まずに済むよう設けられた仕組みです。そのため前払金は戻る割合が大きくなりやすいのが基本ですが、全額が戻ると断定はできません。

というのも、国の指導指針では、契約解除日までの利用期間に係る利用料や原状回復のための費用を適切な範囲で設定・受領することは差し支えないとされており、何が・どのお金(前払金か敷金か)から差し引かれるかの実際の取り扱いは契約内容によって異なるからです。何が差し引かれ、何が戻るのかは、最新の取り扱いを施設へ確認してください。

指導指針は、解約の申し出から実際の契約解除までの予告期間を設けることで、この3か月の期間を事実上短くして入居者の利益を不当に害してはならないともしています。予告期間が長く設定されていないかも、あわせて見ておきます。

施設探しの段階では、契約書・重要事項説明書に「短期解約特例」「3か月以内の解約」に関する記載があるか、差し引かれる費用の範囲はどこまでか、を必ず確認しましょう。入居前の見学や体験入居を活用し、合うかどうかを早めに見極めることも、この制度を上手に使うコツです。

06返還金はいつ、誰に戻る?

戻る時期と受け取る人は、法令で一律の日数が決まっているわけではなく、契約書に書かれた内容で決まります。

標準指導指針は、入居契約書に「前払金の返還金の有無、返還金の算定方式及びその支払時期」などを明示するよう求めています。退去や死亡から何日以内に、どの口座に、誰あてに返すのかは、契約書の該当箇所で確認できます。記載が見当たらない場合は、契約前に施設に質問し、回答を書面でもらっておきます。

ご本人が亡くなって契約が終わった場合、返還金を誰が受け取るかも契約書の定めに従います。相続人の間で受け取りの手続きが必要になることがあるので、身元引受人や家族のうち誰が窓口になるかを、入居の段階で決めておくと手続きが進めやすくなります。

なお、指導指針では、入居開始可能日より前に契約を解除した場合は、受け取った金額を全額返還することとされています。前払金の内金(申込金)は前払金の20%以内とすることも、同じ指針に定められています。

07事業者が倒産したら、前払金は守られる?

前払金を受け取る有料老人ホームには保全措置が義務づけられていますが、保全される額には上限があります。未償却分がすべて守られるとは限りません。

「前払金を払った後に、施設が倒産したらどうなるの?」という不安に応える制度が、保全措置(ほぜんそち)です。

保全措置は、施設の運営会社が倒産などで契約解除に至った場合に、まだ戻っていない前払金(未償却分)を一定額まで返せるよう、銀行等との連帯保証・保証保険・信託などのいずれかをあらかじめ講じておく仕組みです(老人福祉法第29条)。保全しなければならない金額(保全金額)は、法令上、「予定償却期間のうち残存する期間に係る額(未償却分に相当する額)か、500万円か、いずれか低い方の金額以上」と定められています(平成18年厚生労働省告示第266号)。このため、未償却分が500万円を超えるような高額な前払金では、その全額が必ず保全されているとは限りません。実際にいくらまで保全されるかは施設の保証契約によるため、重要事項説明書・保証契約で確認してください。

対象は段階的に広がってきました。かつては平成18年3月31日以前に届出された古くからの施設が対象外とされていましたが、法改正(平成29年法律第52号)を経て、令和3(2021)年4月1日以降に新規入居した方については、こうした施設も含めて、前払金を受け取る有料老人ホームに保全措置が義務づけられています。

注意したいのは、保全されるのは前払金(未償却分)が中心で、上限があるという点です。前払金がとても高額な場合、未償却分すべてが守られるとは限りません。また、月払い方式で前払金を取らない施設では、そもそも保全措置の対象となる前払金がありません。制度の詳しい適用は施設・自治体で確認が必要です。

施設探しの段階では、重要事項説明書で「保全措置の有無・方法(どの銀行/保険/信託か)」を確認しましょう。前払金が高額な施設ほど、未償却分と保全の上限額を並べて確認します。

08契約前・退去前に何を確認する?

前払金の内訳、返還金の算定方式と支払時期、差し引かれる費用の範囲、保全措置の4つを、契約書と重要事項説明書で一つずつ確かめます。

返還金まわりは制度がやや複雑なので、契約書と重要事項説明書を軸に、次の点を一つずつ確認します。契約前に確認すべき項目全体は老人ホーム契約前に確認すること|重要事項説明書・前払金・退去要件の見方でも整理していますので、返還金以外の論点もあわせて見直しておくと安心です。

  • 前払金の有無とタイプ:前払金あり/月払い(前払金なし)のどちらか。0円でも月額が高めな場合があるため、総額で比較する。
  • 初期償却額・想定居住期間・償却年月数:「いくら先に引かれ」「何年かけて消化するか」。早期退去時の残額に直結する。
  • 返還金の算定方法:3か月以内(短期解約特例)と、3か月経過後の両方の計算ルール。
  • 差し引かれる費用の範囲:家賃以外(管理費・食費・原状回復費など)に何が含まれるか。
  • 返還の時期と相手:いつ、誰に支払われるか(本人死亡時は相続人など、手続きの流れ)。
  • 保全措置の有無と方法:倒産時に未償却分がどう守られるか、上限はいくらか。

これらは敷金(しききん)とは別の扱いになることが多く、返還ルールも異なります。用語が紛らわしいときは、その場で施設の担当者に確認しましょう。

なお、ここで挙げた制度や金額は改定されることがあり、具体的な数値は施設ごとに違います。最新かつ正確な内容は、必ず入居予定施設の重要事項説明書・契約書、および自治体の窓口で確認してください。当ガイドは仕組みの全体像を理解するための入口としてご活用ください。

FAQ

このガイドのよくある質問

A.

入居後おおむね3か月以内(いわゆる90日ルール)に契約が終了した場合は、実際に住んだ日数分の家賃などの実費を差し引いた残りが戻る「短期解約特例」があり、前払金は戻る割合が大きくなりやすいのが基本です。ただし全額が戻ると断定はできず、差し引かれる費用の範囲は施設によって異なります。契約書と重要事項説明書で確認してください。

A.

前払金のうち入居時に差し引かれる「初期償却」分は、原則として退去・死亡時に戻らない扱いが一般的です。戻るのは、まだ充当されていない「未償却分」にあたる返還金です。ただし、入居後3か月以内の短期解約特例にあたる場合は、実費を差し引いた残りが戻る考え方になります。初期償却の割合は施設ごとに異なるため、重要事項説明書で要確認です。

A.

前払金を取る有料老人ホームには「保全措置」が義務づけられており、倒産などで契約解除になった場合に、未償却分の前払金を一定額まで返せるよう、銀行等の保証・保証保険・信託などを講じることになっています(老人福祉法第29条)。保全すべき金額は法令上「未償却分に相当する額か500万円のいずれか低い方の金額以上」とされているため、未償却分が500万円を超える高額な前払金では、すべてが守られるとは限りません。保全措置の有無・方法・上限を重要事項説明書で確認しましょう。

A.

返還の時期を一律に定めた法令の日数はなく、入居契約書に書かれた支払時期に従います。国の標準指導指針は、契約書に返還金の有無・算定方式・支払時期を明示するよう求めているため、退去や死亡から何日以内に誰あてに返されるかは契約書で確認できます。記載が見当たらない場合は契約前に施設へ質問してください。

A.

返還金の算定方法は、施設ごとに「契約書」と「重要事項説明書」に記載されています。とくに、初期償却額・想定居住期間・償却年月数・短期解約特例の扱い・差し引かれる費用の範囲を確認するとよいでしょう。記載がわかりにくいときは、見学や相談の場で「1年で退去したら」「すぐ亡くなったら」など具体的な想定で施設に質問するのがおすすめです。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。

  • 施設の重要事項説明書・契約書

    前払金の算定根拠、初期償却額、想定居住期間、償却年月数、返還金の算定方法、保全措置の有無・上限を確認する一次資料

  • 老人福祉法 第29条(e-Gov法令検索)

    有料老人ホームの前払金に関する書面明示義務・保全措置(第29条第9項)・返還契約義務(同条第10項)の根拠条文。項番号は改正で変動するため本文には記載しない。2026-07-08 e-Gov現行条文で確認済み

  • 老人福祉法施行規則(短期解約特例の期間・算定方法・保全対象)

    第21条(短期解約特例の期間=3月、控除額=家賃等の月額÷30×入居日数、想定居住期間内の返還方法)、第20条の9(保全対象の範囲)。2026-07-08 e-Gov現行条文で確認済み

  • 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」

    前払金の算定根拠(1か月分の家賃等×想定居住期間+想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)、契約書への返還金の算定方式・支払時期の明示、予告期間による3か月の短縮の禁止、入居開始可能日前の解除時の全額返還、内金20%以内。2026-10-13 指針本文(令和3年4月1日最終改正版PDF)で確認

  • 内閣府 消費者委員会 資料『有料老人ホームの一時金の保全について』(告示266号・指導指針の抜粋)

    保全金額=「予定償却期間の残存期間に係る額か500万円のいずれか低い方の金額以上」(平成18年厚生労働省告示第266号)、指導指針の概ね90日以内の返還・利用料/原状回復費の受領の原文抜粋。2026-07-08 PDF本文で確認済み

  • 厚生労働省 介護保険制度の概要

    介護施設の費用・制度の全体像を確認

  • 自治体(市区町村)の高齢福祉・有料老人ホーム担当窓口

    前払金・保全措置の適用や指導状況など、地域ごとの最新の取り扱いを確認

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