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退去条件で確認すること|契約書のどこを読むかを表すイラスト手続き

退去条件で確認すること|契約書のどこを読むか

作成日
2026年6月21日
最終更新日
2026年7月8日

老人ホームの退去・契約解除の条件は施設の気分次第ではなく、契約書・重要事項説明書・管理規程に明記されます。心身の悪化や入院、料金、前払金返還まで、契約前に確認したい観点を一次情報をもとに整理します。具体的な金額や条項は最新の重要事項説明書・施設・自治体での確認を前提にしてください。

01退去条件は『施設次第』ではなく、契約書に書いてあります

「介護度が重くなったら追い出されるのでは」という不安は、とてもよく耳にします。けれど退去・契約解除の条件は、施設のさじ加減で決まるものではなく、入居契約書・重要事項説明書・管理規程に書かれているべき事項です。

厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」は、入居契約書に「契約解除の要件およびその場合の対応」「前払金の返還の有無、返還額の算定方式およびその支払時期」などを明示するよう求めています。つまり、どんなときに退去になり、その際にお金がどう精算されるかは、契約書を読めば確認できる、というのが本来の姿です(指針は改正されることがあるため、項目の細かな表現や番号は最新版でご確認ください)。

入居から契約までの一連の流れの中で、気に入った施設が見つかったら、契約前に契約書と重要事項説明書の両方を入手し、「退去」「契約解除」「住み替え」「返還」という言葉が出てくる箇所を探して読みましょう。重要事項説明書は入居相談の段階でも交付され、契約締結前に十分な時間的余裕をもって説明するものとされています。口頭の説明だけで判断せず、書面で確認する。これが退去リスクを見極める出発点です。

02設備や介護を理由に簡単には退去させられない

「設備が古くなった」「手がかかるようになった」といった理由で、施設側が一方的に退去を求める――そうした契約は、本来は適切でないとされています。

標準指導指針は、入居契約書に定める設置者(施設側)の契約解除の条件は、入居者の権利を不当に狭めるものとならないようにすること、そして入居者・設置者双方の契約解除に関する事項を契約書に定めておくこと、という趣旨を示しています。施設側が広く・あいまいな理由で退去させられる契約は、この考え方に沿っていません。

また、契約書の作成にあたっては、消費者契約法の趣旨を踏まえ、事業者の損害賠償責任を不当に免除する条項や、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となる場合があるとされています。退去時の違約金や精算の取り決めが極端に施設有利になっていないかを見る手がかりになります。

施設探しで確認したいのは、施設側からの解除事由が具体的に・限定的に書かれているか。「当ホームが必要と認めたとき」のような漠然とした条項だけになっていないか、契約前に質問しておくと安心です。条文の正確な表現や該当箇所の番号は指針の最新版や施設の契約書で確認してください。

03心身の変化・医療的ケア・入院でどうなるか

入居後に介護度が重くなったり、医療的なケアが必要になったときに何が起きるかは、最も気がかりな点だと思います。ここは施設の体制によって対応が分かれるため、断定はできません。自施設で対応できるか、住み替えになるか、提携先を紹介するかは、契約書・管理規程と看護体制で決まります

標準指導指針は、一定の要介護状態になったことなどを理由に住み替えや契約解除をする場合について、契約書または管理規程にあらかじめ手続を明らかにしておくよう求める趣旨を示しています。一般に挙げられるのは、医師の意見を聴くこと、本人または身元引受人等の同意を得ること、一定の観察期間を設けること、といった手続です。つまり、心身の変化を理由とする退去・住み替えには手続きの裏づけが想定されており、施設が即断で決めてよいものではありません。具体的にどのような手続が定められているかは、その施設の契約書・管理規程で確認してください。

喀痰吸引(たんの吸引)や経管栄養(胃ろうなど)といった医療的ケアは、研修を修了した職員の有無や看護体制によって受け入れの可否が変わります。「施設だから必ず対応できる」とは限らないため、施設探しではどこまでの医療的ケアに対応でき、対応できなくなった場合はどうなるかを、重要事項説明書と看護職員の配置で確認しましょう。入院が長引いた場合の扱い(居室の確保や費用、契約の継続可否)も契約ごとに異なるため、施設に直接確認するのが確実です。

04退去・解約とお金:前払金の返還ルールを確認する

退去で気になるのがお金の精算です。費用の額や相場は施設ごとに大きく異なるため断定はできませんが、ルールがどこに書かれているかは決まっています前払金がどのような仕組みで戻ってくるかを踏まえたうえで、契約書の該当箇所を確認していきましょう。

前払金(入居一時金)を受け取る施設では、老人福祉法第29条に基づき、前払金の保全措置を講じることや、入居後の一定期間内に契約が解除されたり入居者が死亡したりして終了した場合に前払金の一部を返還する旨の契約を結ぶことが求められており、返還額の算定方式を入居契約書等に明示することが想定されています。返還方法は老人福祉法施行規則が定めており、入居後3か月(三月)が経過するまでに契約解除または入居者の死亡で終了した場合は、家賃その他の費用の月額を30で除した額に、入居日から終了日までの日数を乗じた額を控除し、残りを返還するという考え方が示されています。いわゆる短期解約特例で、「90日ルール」と呼ばれることもあります(条文の項番号は法改正で変わることがあるため、最新の条文でご確認ください)。

敷金を受け取る場合は、一般に家賃の数か月分を上限とすること、退去時に居室の原状回復に要する費用を除いて返還することなどが指針で示されています。施設探しでは、返還金の算定方式・支払時期・短期解約特例の扱い・敷金と原状回復の負担区分を契約書で確認し、具体的な金額は最新の重要事項説明書や料金表で確かめてください。退去時に実際にかかる費用の内訳も合わせて確認しておくと、精算時のイメージがつかみやすくなります。

05施設の種類で枠組みが違う:有料老人ホーム・サ高住・特養

ここまでは主に有料老人ホームを前提に説明してきましたが、退去のルールは施設の種類(契約の法的性質)によって枠組みが変わります。混同しないことが大切です。

有料老人ホームは、これまで述べた標準指導指針が考え方の中心です。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のうち賃貸借契約に基づく住まいでは、借地借家法のルールが関わります。一般に、貸主(事業者)側からの解約申入れには借地借家法上の『正当の事由』が必要とされ(第28条)、期間の定めのない建物賃貸借は解約申入れの日から6か月の経過で終了するとされる(第27条)など、住宅としての保護が働きます。契約が「賃貸借型」か「利用権型」かで退去の枠組みが変わるため、どちらの契約かを確認しましょう。

特別養護老人ホーム(特養)は介護保険の施設サービスで、別制度です。運営基準では、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないとされ、入院治療が必要などで自施設での適切な対応が困難な場合は、適切な病院や施設を紹介する等の措置を講じるものとされています。また運営基準では、入院後おおむね3か月以内に退院することが明らかに見込まれるときは、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後に円滑に再入所できるようにしなければならないとされています。それを超える長期入院時の扱いは施設・自治体で運用が異なるため、退去や再入所の条件は個々の重要事項説明書と自治体で必ず確認してください。

施設探しでは、自分が検討している施設がどの種類で、退去ルールがどの法令の枠組みに乗るかを、まず押さえておくと比較がしやすくなります。

有料老人ホームは老人福祉法と標準指導指針、賃貸借型のサ高住は借地借家法(正当事由・解約申入れから6か月)、特養は介護保険法の運営基準(提供拒否の禁止・入院時の再入所配慮)と、施設の種類ごとに退去ルールの枠組みと契約前に読む書面を整理した比較表

06契約前に確認するチェックリストと相談先

最後に、退去リスクを見極めるために契約前に確認したい観点を整理します。契約前の確認事項全体の中でも、特に退去に関わる部分を挙げると次のとおりです。費用や制度の要件は変わり得るため、最新の重要事項説明書・契約書・自治体で確認することを前提にしてください。

  • 施設側からの契約解除事由が、具体的・限定的に書かれているか(漠然とした『当ホームが必要と認めたとき』だけになっていないか)
  • 心身の悪化・医療的ケア・入院が必要になったときの扱い(医師の意見・本人や身元引受人の同意・観察期間・住み替え先・提携先の紹介の有無)
  • 料金滞納や他の入居者への重大な迷惑など、解除に至る事由と手続き(予告期間や猶予の有無)
  • 前払金(入居一時金)の返還の有無・算定方式・支払時期、短期解約特例(入居後3か月以内)の扱い
  • 敷金の上限と退去時の原状回復・精算、月額費用の日割り精算の方法
  • 身元引受人に求められる役割と、いない場合の代替手段

これらは契約書・重要事項説明書・管理規程に書かれているべき事項です。読んでも分からない、あるいは不利に感じる条項があるときは、一人で抱えず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、自治体の相談窓口、消費生活センター、必要に応じて弁護士など専門家に相談しましょう。退去を急に求められた場合も同様に、まず契約書の該当条項を確認し、公的な相談先に相談することをおすすめします。

FAQ

このガイドのよくある質問

A.

必ず退去になるとは限りません。退去や住み替えになるかは、施設の介護・看護体制と契約書・管理規程の定め次第です。厚生労働省の標準指導指針では、一定の要介護状態などを理由に住み替え・契約解除をする場合、あらかじめ手続を契約書または管理規程に明らかにしておくよう求める趣旨が示されています(一般に、医師の意見を聴く、本人または身元引受人等の同意を得る、一定の観察期間を設ける、といった手続が挙げられます)。施設が即断で決めてよいものではありません。検討中の施設では、どこまでの状態変化に対応でき、対応できなくなった場合にどうなるかを、重要事項説明書で確認してください。

A.

返還額は施設の料金体系によって異なるため一概には言えませんが、ルールの枠組みは法令で定められています。老人福祉法施行規則では、入居後3か月(三月)が経過するまでに契約解除または入居者の死亡で終了した場合、家賃その他の費用の月額を30で除した額に入居日から終了日までの日数を乗じた額を控除し、残りを返還するという考え方が示されています(短期解約特例、いわゆる90日ルール)。返還の有無・算定方式・支払時期は契約書に明示されるべき事項です。具体的な金額や条文の最新の内容は、最新の重要事項説明書・契約書や法令でご確認ください。

A.

標準指導指針では、施設側の契約解除の条件は入居者の権利を不当に狭めないものであるべきとされ、双方の契約解除に関する事項を契約書に定めておくこととされています。漠然とした理由で一方的に退去を求められる契約は、この考え方に沿いません。退去を求められた場合は、まず契約書の解除条項と重要事項説明書を確認し、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、自治体の相談窓口、消費生活センター、必要に応じて弁護士など専門家に相談してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。

  • 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(最新版を確認)

    契約解除の要件・前払金返還・敷金・医師意見/観察期間・消費者契約法の留意点。指針は改正されるため項番号・表現は最新版で要確認

  • e-Gov法令検索(老人福祉法・同施行規則・介護保険法・高齢者住まい法・借地借家法)

    老人福祉法第29条(前払金の保全=第9項・返還契約=第10項)、同施行規則第21条(短期解約特例:3月・月額÷30×日数)、借地借家法第27条(解約申入れから6月で終了)・第28条(正当の事由)、指定介護老人福祉施設基準 第4条の2(提供拒否の禁止)・第4条の3(提供困難時の病院等紹介)・第19条(入院おおむね3月以内の再入所配慮)。2026-07-08 e-Gov現行条文で確認済み

  • 介護サービス情報公表システム

    事業所の体制・サービス内容の確認

  • WAM NET 高齢・介護

    制度・施設種別の解説の確認用

  • 施設の入居契約書・重要事項説明書・管理規程

    退去事由・予告期間・返還金の算定方式・敷金/原状回復・身元引受人の役割を確認(リンク不可。施設から個別に入手)

  • 自治体・地域包括支援センター・消費生活センター

    退去や契約トラブルの相談先。制度・運用は自治体で要確認(リンクは各自治体公式ページ)

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