親が老人ホームに入ると、扶養控除の区分は「同居老親等」(58万円)から「同居老親等以外」(48万円)に変わります。国税庁は、老人ホームに入所した場合はその老人ホームが居所になり、同居しているとはいえないとしているためです。要介護認定だけでは障害者控除は受けられず、市区町村の認定書が必要です。

秋になると、勤務先から年末調整の書類が届きます。親が施設に入った年は、扶養控除等申告書の「同居老親等」の欄をそのままにしてよいのか、要介護3の親を障害者として書けるのか、迷う方が多い時期です。ここでは国税庁の説明をもとに、施設に入った親を扶養に入れるときの条件と、障害者控除を受けるための認定書の取り方を整理します。

この記事の答えを先にまとめると、次のとおりです。

  • 70歳以上の親が老人ホームに入所している場合、扶養控除は同居老親等以外の老人扶養親族(48万円)の区分になる。病院への入院は同居のまま扱えるが、老人ホームへの入所は扱いが違う
  • 施設に入っていても、子が生計を一にしていて、親の合計所得金額が要件以下なら扶養控除の対象になる。きょうだいで仕送りしていても、控除を受けられるのは1人だけ
  • 要介護認定を受けているだけでは障害者控除の対象にならない。市区町村が交付する「障害者控除対象者認定書」などがあれば、障害者(27万円)または特別障害者(40万円)の控除を受けられる

親が老人ホームに入ると、扶養控除の額は変わる?

変わります。70歳以上の親が老人ホームに入所すると、「同居老親等」の58万円ではなく「同居老親等以外」の48万円の区分になります。

国税庁のタックスアンサー(No.1180)では、扶養控除の額を次のように定めています。年齢はその年の12月31日現在で判定します。

区分控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上70歳未満)38万円
老人扶養親族(70歳以上)のうち、同居老親等以外の人48万円
老人扶養親族(70歳以上)のうち、同居老親等58万円

同居老親等とは、納税者または配偶者の父母・祖父母などで、納税者または配偶者と普段同居している人をいいます。この「同居」について、国税庁は病気の治療のために入院している場合は、結果として1年以上の長期にわたっても同居として扱ってよいとしています。一方で、老人ホームなどへ入所している場合は、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえないとしています(国税庁 質疑応答事例「『同居』の範囲(長期間入院している場合)」)。

扶養親族に当たるかどうかや区分は、その年の12月31日の現況で判定します。たとえば2026年の秋に施設へ入所し、12月31日も施設で暮らしている場合、2026年分は「同居老親等以外」の区分になります。年の途中まで同居していたことは、区分の判断には使いません。

控除額が58万円から48万円に変わると、所得控除が10万円少なくなります。所得税が実際にいくら変わるかは、控除額の差に申告する人の所得税の税率をかけた額が目安です。住民税にも扶養控除の区分がありますが、金額は所得税と異なります。

施設に入っている親でも扶養控除の対象になる?

なります。子と親が「生計を一にしている」こと、親の合計所得金額が要件以下であることなど、4つの要件を満たせば、施設に入っていても扶養控除の対象です。

扶養親族の要件は、国税庁 No.1180 で次の4つとされています。

  1. 配偶者以外の親族であること
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が要件以下であること
  4. 青色申告者の事業専従者として給与を受けていないことなど

施設に入っている親で確認が必要なのは、2と3です。

生計を一にするについて、国税庁は必ずしも同居を要件とするものではないとし、療養などの都合で別居していても、常に生活費や療養費などの送金が行われている場合は生計を一にするものとして扱うとしています(所得税基本通達2-47)。子が施設の費用を支払っている、または毎月仕送りをしている場合が当てはまります。勤務先に確認書類を出す決まりはありませんが、国税庁は振込票や書留の写しで送金の事実を確認することを勧めています。

合計所得金額の上限は年分によって違います。国税庁 No.1180 では、令和7年分は58万円以下(令和2年分から令和6年分までは48万円以下)とされ、令和8年12月1日に施行され令和8年分から適用される金額は62万円以下と注記されています。親の収入が年金だけの場合は、年金の収入額そのものではなく、公的年金等控除を差し引いたあとの所得で判定します。年金額が大きい親は要件を超えることがあるので、年金の源泉徴収票で確認します。

きょうだいで親を支えている場合、扶養控除を受けられるのは1人だけです。国税庁は、きょうだいが均等に送金している場合でも、それぞれが重複して控除の対象にすることはできないとしています。誰が控除を受けるかは、兄弟姉妹で介護費用を分担するときの考え方で整理している費用分担の話し合いに含めておくと、後から食い違いが起きにくくなります。

なお、住民票の世帯を分けているかどうかは、税法上の「生計を一にする」とは別の考え方です。世帯分離の影響は施設入居前の「世帯分離」は本当に得かで扱っています。

要介護認定を受けていれば、障害者控除も受けられる?

要介護認定だけでは受けられません。市区町村などから、障害者または特別障害者に準ずるという認定を受けると、障害者控除の対象になります。

国税庁のタックスアンサー(No.1185)は、所得税法上の障害者は所得税法施行令第10条に限定して列挙されていて、介護保険法の要介護認定を受けた人は含まれていないため、要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にならないとしています。そのうえで、65歳以上で障害の程度が知的障害者や身体障害者に準ずるものとして市町村長などの認定を受けた人は、要介護認定の有無にかかわらず対象になるとしています。

障害者控除の額は次のとおりです(国税庁 No.1160)。扶養控除とは別の控除なので、両方の要件を満たせば重ねて受けられます。

区分控除額
障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者75万円

認定の基準は市区町村が定めていて、要介護度と、主治医意見書などに記載される「障害高齢者の日常生活自立度」「認知症高齢者の日常生活自立度」を組み合わせて判断する自治体があります。たとえば東京都世田谷区と杉並区は、要介護3以上で障害高齢者の日常生活自立度がB以上、または認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上の人を「特別障害者に準ずる者」、要支援・要介護認定を受けていて障害高齢者の日常生活自立度がA以上、または認知症高齢者の日常生活自立度がⅡ以上の人を「障害者に準ずる者」としています。基準は自治体ごとに違うので、親の住所がある市区町村の案内で確認します。

身体障害者手帳を持っている場合は、手帳の等級で判定します(1級・2級は特別障害者)。また、その年の12月31日の現況で引き続き6か月以上、身体の障害で寝たきりの状態にあり、複雑な介護が必要な人も特別障害者に当たります(国税庁 No.1160)。

同居特別障害者の75万円は、特別障害者である扶養親族などが、納税者や生計を一にする親族と「同居を常況としている」場合の区分です。老人ホームに入所している親がこれに当たるかは、上記の同居老親等の考え方とあわせて、所轄の税務署に確認してから申告します。

障害者控除対象者認定書は、どこで、いつ申請する?

親の住所がある市区町村の窓口(介護保険や高齢者福祉の担当課など)で申請します。年末調整に間に合わせたい場合は、早めに申請します。

世田谷区や杉並区の案内では、本人のほか、親族などが申請できるとされています。郵送やオンラインで受け付けている自治体もあります。世田谷区は認定の基準日を12月31日としたうえで、年末調整に使う場合は前倒しで申請できると案内しています。

施設に入るときに住民票を施設の所在地へ移している場合は、申請先がどこになるかに注意が必要です。住所地特例の対象施設では、介護保険の保険者は移る前の市区町村のままになるため、認定書の申請をどちらの市区町村で受け付けるかを、両方の窓口で確認しておくと二度手間を避けられます。住所地特例の仕組みは老人ホーム入居で住民票は移すべき?で解説しています。

認知症の親について、認定の申請が年をまたいだ場合の扱いも国税庁が示しています。前年の12月31日現在で認定を受けられる程度の障害があり、申告のときに認定を申請中である場合は、前年分に障害者控除を適用して差し支えないとされています(国税庁 質疑応答事例「福祉事務所長の認定を受けていない認知症の高齢者に係る障害者控除の適用」)。

年末調整と確定申告では、何を確認すればいい?

12月31日の現況で、親の区分(同居かどうか)、所得、障害者の認定の3つを確かめ、扶養控除等申告書に反映させます。

施設に入っている親を扶養控除と障害者控除の対象にできるかを判定する流れ。12月31日時点で70歳以上かを確認し、生計を一にしていて合計所得金額が要件以下なら扶養控除の対象。老人ホームに入所していれば同居老親等以外の48万円、同居または入院中なら同居老親等の58万円。別に、身体障害者手帳か市区町村の障害者控除対象者認定書があれば障害者27万円、特別障害者40万円の控除を重ねて受けられる

会社員の子が年末調整で申告する場合は、次の順で確認します。

  1. 12月31日に親がどこで暮らしているかを確かめる:老人ホームに入所していれば「同居老親等」に当たらない。病院に入院中なら同居のまま扱える
  2. 親の合計所得金額を確かめる:年金の源泉徴収票などで、申告する年分の要件以下かを見る
  3. 誰が扶養控除を受けるかをきょうだいで決める:重複して申告しない
  4. 障害者控除の認定書があるかを確かめる:なければ市区町村に申請し、認定書の写しを手元に置く
  5. 扶養控除等申告書の該当欄を書き直す:区分や障害者の欄を、12月31日の見込みに合わせる

年末調整に間に合わなかった場合や、前の年に同居老親等のまま申告していた場合は、確定申告で直すことになります。控除を受け忘れて税金を納め過ぎていた場合の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 No.2030)。ただし障害者控除の認定書を過去の年分について交付するかどうかは自治体によって扱いが異なるため、窓口で確認します。反対に、控除を多く受けていた場合は、修正申告や勤務先での年末調整のやり直しが必要になることがあります。

施設費用そのものについては、施設の種類によって医療費控除の対象になるかどうかが変わります。特養・老健・介護医療院の費用の扱いは老人ホームの費用は医療費控除の対象?で整理しています。

施設を探している段階で知っておきたいこと

扶養控除の区分は入所した年から変わるので、年末に近い時期に入所が決まりそうな場合は、年末調整の書類を書く前に家族の誰が申告するかを話し合っておきます。障害者控除の認定書は、世田谷区や杉並区のように要介護度と日常生活自立度で判断する自治体もあるため、施設を探し始めた段階で要介護度と日常生活自立度を把握しておくと、申請の準備もしやすくなります。

税額は世帯の所得によって変わります。施設費用の負担を軽くする制度を横断して確かめたいときは老人ホーム費用を抑える方法を、自分の家庭の場合の判断に迷うときは所轄の税務署や市区町村の窓口に問い合わせてください。


参考にした一次情報(2026年10月9日確認)

税制の取り扱いは改正されることがあります。申告する年分の取り扱いは、国税庁と市区町村の最新の案内で確認してください。