施設に移ると、これまでの暮らしがすっかり変わってしまうのでは——そう不安に思うご家族は少なくありません。実は「本人らしさを大切にする」という考え方は、気持ちの問題であると同時に、介護の制度そのものに書き込まれた土台でもあります。
介護保険法の第1条(目的)は、介護を必要とする人について「これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」サービスを行うと定めています。「尊厳の保持」と「その人にできることを活かした暮らし」が、制度の出発点に据えられているのです。
さらに第2条では、サービスが「被保険者の選択に基づき」提供されること、要介護状態になっても「可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように」配慮することが示されています。つまり「本人が選ぶこと」「これまでの暮らしになるべく近いこと」は、施設選びの“わがまま”ではなく、制度が想定している当たり前の視点だということです。
施設探しでは、まずこの軸をご家族のなかで言葉にしておくと迷いが減ります。「本人が大切にしてきた習慣は何か」「本人なら何を選ぶか」を書き出し、見学先でその一つひとつを確かめていく——これが「本人らしさを残す施設選び」の最初の一歩になります。何から手をつければよいか迷うときは、相談窓口や要介護認定の申請から順にたどれる施設探しの始め方もあわせて確認してみてください。
