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施設選びで「本人らしさ」を残す——尊厳の保持から考える

作成日
2026年6月21日
最終更新日
2026年6月21日

親や配偶者が施設に移っても「その人らしい暮らし」を続けてほしい。介護保険法が掲げる尊厳の保持を出発点に、ケアプランへの本人の意向の反映、ユニットケアやグループホームといった暮らしの形、見学で確かめる問い、公的情報の見方まで、施設探しで具体的に何を確認すればよいかを寄り添ってまとめます。

01「本人らしさを残す」とは、制度の言葉でいうと何か

施設に移ると、これまでの暮らしがすっかり変わってしまうのでは——そう不安に思うご家族は少なくありません。実は「本人らしさを大切にする」という考え方は、気持ちの問題であると同時に、介護の制度そのものに書き込まれた土台でもあります。

介護保険法の第1条(目的)は、介護を必要とする人について「これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」サービスを行うと定めています。「尊厳の保持」と「その人にできることを活かした暮らし」が、制度の出発点に据えられているのです。

さらに第2条では、サービスが「被保険者の選択に基づき」提供されること、要介護状態になっても「可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように」配慮することが示されています。つまり「本人が選ぶこと」「これまでの暮らしになるべく近いこと」は、施設選びの“わがまま”ではなく、制度が想定している当たり前の視点だということです。

施設探しでは、まずこの軸をご家族のなかで言葉にしておくと迷いが減ります。「本人が大切にしてきた習慣は何か」「本人なら何を選ぶか」を書き出し、見学先でその一つひとつを確かめていく——これが「本人らしさを残す施設選び」の最初の一歩になります。何から手をつければよいか迷うときは、相談窓口や要介護認定の申請から順にたどれる施設探しの始め方もあわせて確認してみてください。

02本人の希望は、ケアにどう反映されるのか

「施設に入ったら、もう本人の希望は聞いてもらえないのでは」と心配される方がいます。けれど施設のケアは、本来、本人の意向を踏まえて組み立てられる仕組みになっています。

施設では一人ひとりに「施設サービス計画(ケアプラン)」が作られます。ケアプランとは、その人にどんな支援を、どのように行うかをまとめた計画のことです。特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)などの運営基準では、施設サービス計画に基づき入所者の意思や人格を尊重し、本人の立場に立ってサービスを提供するよう努めること、そして計画の原案は本人や家族に説明し、文書によって本人の同意を得ることが求められています。本人の「こうしたい」がケアに反映される入口が、制度上きちんと用意されているのです。

ただし、仕組みがあることと、現場でどこまで丁寧に運用されているかは別の話です。だからこそ見学のときに、次のように具体的に尋ねてみてください。「本人の希望や生活歴は、どうやって聞き取っていますか」「ケアプランを作るとき、本人や家族はどんな形で関われますか」「入居後、本人の様子が変わったら計画はどう見直しますか」。

答えに本人を主語にした言葉が自然に出てくるか、過去の生活や好みをどう扱っているか——そこに、その施設が「本人らしさ」をどれだけ大切にしているかがにじみます。回答の細かな運用は施設ごとに異なるため、気になる点は遠慮なくその施設に直接確認しましょう。

03暮らしの形から見る——ユニットケアとグループホーム

「本人らしさを残せるか」は、施設の種別だけでは決まりませんが、暮らしの“形”の違いを知っておくと、見学先を見る目が変わります。代表的な考え方を二つ紹介します。

一つは「ユニットケア」です。厚生労働省は、入所者の尊厳を重視したケアを実現するため、少人数のまとまり(ユニット)ごとに、できるだけ家庭に近い環境で個別にケアを行う方向を示してきました。大勢を一律に動かすのではなく、少人数の単位で一人ひとりの生活リズムや個性に沿う、という発想です。

もう一つは認知症の方向けの「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」です。これは「家庭的な環境と地域住民との交流のもとで」食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などのサービスを受けるもので、「1つの共同生活住居に5〜9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送る」地域密着型サービスとされています。少人数で、なじみの関係のなかで暮らす形です。対象となる要件や費用の考え方をもう少し詳しく知りたい場合は、グループホームの特徴や対象・費用の考え方をまとめた解説も参考になります。

どちらが合うかは、本人の状態や望む暮らし方、そして各施設の運営方針との相性で決まります。利用できる対象(要介護度や認知症の有無、同じ市町村に住んでいるかなど)にも条件があるため、見学では「ここでは一日をどう過ごすのか」「少人数のまとまりで関わってもらえるのか」「本人は対象になるのか」を具体的に確認し、種別のイメージだけで判断しないようにしましょう。

04見学・比較で「本人らしさ」を確かめる問い

パンフレットの言葉だけでは、本人らしい暮らしが続けられるかは分かりません。見学や問い合わせのときに、暮らしの細部を具体的に尋ねるのがいちばん確実です。以下は「本人らしさ」を確かめるための問いの例です。チェックリストとして使ってみてください。

  • 一日の過ごし方にどのくらい自由があるか。起床・食事・入浴の時間は本人の希望に合わせられるか
  • 居室に持ち込める私物(家具・写真・仏壇・愛用品など)の範囲はどこまでか
  • これまで続けてきた習慣(晩酌、散歩、趣味、信仰、好きなテレビなど)を続けられるか
  • 外出や外泊、家族の面会はどの程度できるか
  • 食事の内容や時間に、本人の好みや食習慣を反映してもらえるか
  • 本人の「できること」を取り上げず、なるべく自分で続けられるよう支えてもらえるか

これらは「できますか/できませんか」で終わらせず、「どんなふうに対応していますか」と聞くのがコツです。具体的なエピソードで答えてくれる施設は、日頃から一人ひとりに向き合っている可能性が高いといえます。特に趣味や日課を続けたい思いが強い場合は趣味を続けられる老人ホームの探し方や過ごし方の確認ポイントが、起床・食事・入浴の時間や夜間の様子が気になる場合は生活リズムに不安がある場合の施設選びで確認したい夜間体制・医療連携のポイントが、それぞれ具体的な質問の組み立てに役立ちます。なお、対応の可否やルールは施設ごとに大きく異なり、最新の運用も変わりうるため、最終的には必ずその施設に直接確認してください。

05公的情報で下調べし、料金・医療的ケアは要確認に徹する

見学の前に、公的な情報で当たりをつけておくと比較がぐっと楽になります。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」では、全国の介護サービス事業所について、名称・所在地・職員配置・サービス内容・利用料などの基本情報に加え、利用者の権利擁護の取組、相談・苦情への対応、サービスの質の確保への取組といった運営情報を、誰でも無料でインターネット上で確認できます。「本人らしさ」を大切にしているかを見るうえで、運営情報は特に参考になります。

また、令和6年度(2024年度)の運営基準改正により、介護サービス事業者は重要事項などの情報を法人ホームページや介護サービス情報公表システムに掲載・公表することが原則として義務づけられ、1年間の経過措置を経て令和7年(2025年)4月1日から適用されています。見学前に運営方針や料金の概要を確認しやすくなりました。

一方で、注意したいのが料金と医療的ケアです。費用の相場や、喀痰吸引(たんの吸引)・経管栄養(胃ろうなどからの栄養補給)といった医療的ケアへの対応可否は、施設の体制や時期によって大きく異なります。これらは介護職員でも一定の研修を修了した人や看護職員でなければ行えない場合があるなど、体制によって扱いが変わるため、「施設だから必ず対応できる」とは限りません。本記事では金額や「対応できる/できない」を断定しません。料金は各施設の最新の料金表・重要事項説明書で、医療的ケアは看護体制や研修修了者の配置を含めてその施設に直接確認し、制度や費用の最新情報は自治体の窓口(地域包括支援センター等)にも問い合わせて、必ず最新の一次情報で確かめてください。

FAQ

このガイドのよくある質問

A.

介護保険法は「可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営む」よう配慮することを掲げており、本人らしい暮らしを続けることは制度の基本的な考え方です。ただし、起床・食事・入浴の時間にどのくらい自由があるかは施設ごとに異なります。見学のときに「一日の過ごし方の自由度」「時間を本人の希望に合わせられるか」を具体的に尋ね、対応の可否はその施設に直接確認してください。

A.

施設では一人ひとりに施設サービス計画(ケアプラン)が作られます。特別養護老人ホームなどの運営基準では、入所者の意思や人格を尊重し、計画の原案を本人や家族に説明して文書により本人の同意を得ることが求められており、本人の希望がケアに反映される仕組みがあります。実際の聞き取り方や見直しの丁寧さは施設によって差があるため、見学時に「生活歴や希望をどう聞き取り、計画にどう反映するか」を確認するとよいでしょう。

A.

「一日の過ごし方の自由度」「起床・食事・入浴の時間を本人に合わせられるか」「居室に持ち込める私物の範囲」「外出・外泊・面会の可否」「これまでの習慣(晩酌・趣味・信仰など)を続けられるか」を具体的に尋ねるのがおすすめです。「できますか」で終えず「どのように対応していますか」と聞くと、日頃の関わり方が見えます。対応内容や費用、医療的ケアの可否は最新情報が変わりうるため、必ずその施設・自治体に直接確認してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。

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