老人ホームに入居している親が入院すると、「部屋は空けておいてもらえるのか」「入院中も施設の費用はかかるのか」がまず気になります。答えは施設の種類で変わります。特養は、おおむね3か月以内に退院が見込まれれば再入所できるよう配慮する義務があり、有料老人ホームは契約書しだい、サ高住は入院を理由に解約できない決まりです。

入院の連絡を受けた日は、病院とのやりとりや着替えの準備で慌ただしく、施設との費用の話は後回しになりがちです。ただ、退院の見通しが立ってから「部屋はもう次の方に……」と言われると、退院先を急いで探し直すことになります。入院が決まった段階で、施設に何を確認すればよいかを整理しておきます。

この記事の答えを先にまとめると、次のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム(特養)は、入院後おおむね3か月以内に退院が見込まれるとき、退院後に円滑に再入所できるようにすることが運営基準で義務づけられている。入院中も、月6日までは入院時の費用(1日246単位)がかかる
  • グループホームにも、3か月以内の退院見込みと再入居の受け入れ体制を前提にした入院時費用(月6日まで・1日246単位)がある
  • 有料老人ホームは、部屋の扱いも入院中の料金も契約で決まる。重要事項説明書に「入院等による不在時における利用料金(月払い)の取扱い」という欄があるので、そこを最初に見る
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、入院を理由に事業者が一方的に解約したり部屋を変えたりできないことが、法律の登録基準になっている

入院したら、すぐに退去になる?

すぐに退去になることは通常ありません。ただし、部屋を確保してもらえる期間と根拠は、施設の種類によって違います。

入院で施設を離れても、入居契約はそのまま続きます。問題になるのは「入院が長引いたとき、どこまで部屋を確保してもらえるか」です。このルールが法令で決まっている施設と、契約書で決まる施設があります。

特養・グループホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の4種類について、入院したときの部屋の扱い、入院中の費用、家族が確認する点を並べて比較した図。特養は3か月以内の退院見込みで再入所に配慮する義務があり月6日まで入院時の費用、グループホームも月6日まで入院時費用、有料老人ホームは契約書と重要事項説明書の不在時の利用料金欄で確認、サ高住は入院を理由に一方的な解約や部屋の変更ができない

特養:3か月以内の退院見込みなら、再入所に配慮する義務がある

特養の運営基準(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第19条)は、入所者が入院した場合で、入院後おおむね3か月以内に退院することが明らかに見込まれるときは、本人と家族の希望をふまえ、やむを得ない事情がある場合を除いて、退院後に再び円滑に入所できるようにしなければならないと定めています。

裏を返すと、入院が3か月を大きく超える見込みのときは、この義務の対象から外れます。その場合に退所扱いになるのか、再入所の申込みが必要になるのかは施設によって扱いが分かれるため、入院期間の見込みを主治医から聞けた時点で、施設の生活相談員に伝えて確認しておきます。特養の入所は申込順ではなく必要性の高さで判定されるため、一度退所すると元の施設にすぐ戻れるとは限りません。判定の仕組みは特養の入所判定はどう決まるかで整理しています。

グループホーム:入院時費用の前提は「3か月以内の退院見込み」

認知症の方が暮らすグループホームには、2018年度(平成30年度)の報酬改定で入院時費用が新設されました。厚生労働省の改定資料では、入院後3か月以内に退院が見込まれる入居者について、退院後の再入居の受け入れ体制を整えている場合に、月6日を限度として算定を認めるとされています。認知症の人は入退院による環境の変化で症状が悪化しやすいため、早期の退院と退院後の安定した生活を支える取り組みを評価する、という趣旨です。

改定前に検討に使われた厚生労働省の資料(2017年11月)では、グループホームから退居を判断した背景として「医療ニーズの増加」が最も多く、次いで「長期入院」が挙げられています。入院が長引くと退居につながりやすいのがグループホームの実情です。契約書の退居条件に「長期入院」がどう書かれているかを確認しておきます。

有料老人ホーム:部屋の扱いは契約書しだい

有料老人ホームには、特養のような「3か月」の法令上の目安はありません。部屋の扱いは入居契約書の解約条項で決まります。

そのうえで、国の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」は、事業者に次のことを求めています。

  • 入居者が入院した後、病状が軽快して退院できるようになったら、再び速やかに入居できるよう努めること
  • 事業者側からの契約解除の条件は、信頼関係を著しく害する場合に限るなど、入居者の権利を不当に狭めない内容にすること

指針は自治体が指導に使う基準で、個々の契約書の文言そのものではありません。実際に確認するのは、重要事項説明書の「契約解除の内容」欄にある、事業主体から解約を求める場合の条件と解約予告期間です。退去条件の読み方は退去条件で確認することにまとめています。

サ高住:入院を理由に一方的に解約できない

サ高住は、高齢者住まい法の登録基準で、入院や心身の状況の変化を理由に、事業者が居住部分を変更したり契約を解約したりできない契約であることが求められています(高齢者の居住の安定確保に関する法律 第7条第1項第6号ヘ、同法施行規則 第13条)。入居者と事業者が合意した場合は例外です。

部屋が守られる一方で、住まいの契約が続く以上、入院中も家賃や共益費は契約どおりに扱われます。サ高住で介護サービスや生活支援サービスを別契約で利用している場合は、入院中にそれぞれをどう止めるかを担当のケアマネジャーや事業者と調整します。

入院中も、施設の費用はかかる?

かかる費用とかからない費用があります。部屋を確保してもらう分の費用は、入院中も続くと考えておきます。

入院中に発生しうる費用を、性質ごとに分けると次のようになります。

費用の種類入院中の扱い確認先
介護保険の施設サービス費特養・グループホームは月6日まで入院時の費用(1日246単位)。7日目以降は算定されない施設の料金表
居住費・家賃・管理費部屋を確保している間は、施設が定めた料金や契約に沿って請求される契約書・重要事項説明書
食費食事を提供しない日の扱いは施設ごとに異なる重要事項説明書
病院の医療費・入院中の食事代施設とは別に、病院へ支払う病院の窓口

介護保険の「単位」は、1単位10円で計算すると1割負担で1日246円です。実際は地域によって1単位の単価が10円より高く設定されているため、施設のある地域で金額が少し変わります。特養の場合、入院の初日と最終日はこの費用の日数に数えないことが、厚生労働省の資料(下記の第151回資料4)に示されています。

介護付き有料老人ホームの介護サービス費(特定施設入居者生活介護)には、特養やグループホームのような入院中に算定する区分がありません。入院中に介護保険の自己負担がどう請求されるかは、請求の扱いを施設に確認します。住宅型有料老人ホームで外部の訪問介護などを使っている場合は、入院中はそのサービス自体が止まるので、担当のケアマネジャーに入院を伝えます。

有料老人ホームの重要事項説明書には、国が示した様式に「入院等による不在時における利用料金(月払い)の取扱い」という欄があり、次の3つのどれに当たるかが書かれています。

  1. 減額なし
  2. 日割り計算で減額
  3. 不在期間が一定の日数以上の場合に限り、日割り計算で減額

入院した月の請求書を見て驚かないように、このどれに当たるかを最初に確かめておくと、入院が1か月を超えたときの負担額を見積もれます。負担限度額認定(補足給付)を受けて特養の居住費が軽減されている場合は、入院中の居住費に軽減が及ぶかどうかもあわせて確認します。制度の仕組みは負担限度額認定とはで解説しています。

入院が決まったら、家族は何から確認する?

入院期間の見込みを施設に伝え、部屋の扱い・入院中の費用・退院後に戻れる条件の3点を聞いておきます。

確認は、次の順番で進めると漏れが少なくなります。

  1. 主治医から入院期間の見込みを聞く:特養・グループホームでは「3か月以内に退院が見込まれるか」が扱いの分かれ目になるため、最初に必要な情報です
  2. 施設に入院を伝え、部屋の扱いを聞く:「いつまで部屋を確保してもらえるか」「その間の居住費・家賃はいくらか」「期間を超えたらどうなるか」を具体的に聞きます
  3. 重要事項説明書で入院中の料金の欄を確認する:口頭の説明と書面が一致しているかを見ます
  4. 入院中に施設が対応してくれることを確認する:重要事項説明書の様式には「入退院時の同行」「入院中の洗濯物交換・買い物」「入院中の見舞い訪問」の欄があり、有無と費用が書かれています。家族が通えない日の着替えの受け渡しを誰が担うかを決めておくと、入院中の負担が軽くなります
  5. 退院の見通しが立ったら、病院の相談窓口と退院先を相談する:施設に戻れるか、医療ニーズが増えて別の施設が必要になるかを、病院の地域連携室やMSW(医療ソーシャルワーカー)と早めに話し合います

退院後に元の施設へ戻れず、新しい施設を探すことになった場合の進め方は病院退院時に施設を探す流れで整理しています。医療の必要性が高くなって、施設の種類から見直す場合は介護医療院と特養・老健の違いも参考になります。

入居前に聞いておきたい質問は?

入居後の入院は珍しいことではないので、契約前に「入院したらどうなるか」を聞いておくと、いざというときに慌てずに済みます。

見学や契約前の説明の場で、次の質問をそのまま使えます。

  • 入院した場合、何日(何か月)まで部屋を確保してもらえますか
  • 部屋を確保している間の居住費・家賃・管理費・食費は、それぞれどう請求されますか
  • 入院が長引いた場合、退去をお願いすることはありますか。その場合の予告期間はどのくらいですか
  • 入院中の着替えの受け渡しや、入退院時の付き添いはお願いできますか。費用はかかりますか
  • 協力医療機関に入院した場合と、それ以外の病院に入院した場合で、扱いに違いはありますか

最後の質問は、施設が入院先としてどの病院と連携しているかを知る手がかりにもなります。協力医療機関の役割は2027年4月に向けて見直しが進んでおり、その内容は施設の協力医療機関はこれから変わるで解説しています。契約前に確認したい書類全体の見方は老人ホーム契約前に確認することにまとめています。

この記事で持ち帰れること

  • 入院中の部屋の扱いは、特養とサ高住では法令で、有料老人ホームでは契約書で決まっていると分かった
  • 特養・グループホームでは「3か月以内に退院が見込まれるか」が扱いの分かれ目になり、入院中も月6日までは施設の費用がかかると分かった
  • 有料老人ホームは、重要事項説明書の「入院等による不在時における利用料金」欄で、入院中の料金の扱いを確認できると分かった

親が入院したばかりなら、まず施設の重要事項説明書を手元に出し、「入院」という語が出てくる箇所に印を付けてから施設に電話すると、聞くべきことがはっきりします。これから施設を探す段階なら、介護しせつさーちの検索で候補を絞り込み、見学時に上の質問リストで入院時の扱いを比べてみてください。


参考にした一次情報(2026年9月25日確認)

介護報酬の単位数は改定されることがあります。実際の金額は、入居中または検討中の施設の料金表で確認してください。